IDEAを活用し、屋外イベントを定量的に効果検証。賑わい創出に向けたデータ活用に向けて推進。 東急株式会社
東急株式会社は「まちづくり」を事業の根幹に置き、さまざまな領域で人々の日々の生活に密着した事業を推進しています。東京渋谷の複合施設「渋谷キャスト」になぜIDEAを採用し、どのような活用を計画しているのか。なぜIDEAを選んだのか。その理由を伺いました。
– はじめに、普段の業務内容を教えていただけますか?
東急株式会社は、東京・渋谷や東急沿線を中心に、複合施設や商業施設の開発・運営の事業をおこなっております。
その中でも、渋谷エリアの東急が運営する物件のなかにあるイベントスペースや広場などの公共的な空間の運営やブランディング活動の企画を担当しています。
人口動態の変化やテクノロジーの深化に伴い、消費や移動などの行動様式が変わりつつあります。
渋谷を更に魅力的な街にするため、新しい社会のニーズに適応したまちづくりに必要となる、具体的な施策を推進しています。
– IDEAを2021年12月から導入いただいておりますが、導入のきっかけは何でしたか?
イベント開催時の効果検証をリアルデータを用いて検証したいと考えたからです。
きっかけは「渋谷キャスト」設立の背景にあります。
もともと、「渋谷キャスト」は都営アパートの跡地で東京都の主導する”都市再生ステップアップ・プロジェクト”の中で立ち上がった施設なんです。”都市再生ステップアップ・プロジェクト”とは、民間のノウハウと資金力を導入した都の所有地活用によってまちづくりを先導することにより、渋谷・青山・原宿などの拠点性の高いエリアから人の流れを呼び込むとともに、クリエイティブ産業など渋谷の強みを伸ばす新たな空間を創出する取り組みです。そのため、オフィスやテナントの管理・運営だけではなくエリアマネジメントの視点も必要で、地域自体の賑わい創出も施設運営のミッションとしています。
賑わい創出を目指していく中で、イベント開催時の効果検証が難しいなと感じていました。
イベントごとに、その取り組み自体が賑わい創出に繋がっているのか、また事業者として何らかの形で施設に還元されているのかどうかを把握したいと考えていました。
従来は、物販イベント時の販売数や手動での通行者数計測で取得していましたが、そうではない方法で賑わいを可視化することができたらいいなと思っていたところに、Intelligence Design社からIDEAをご紹介いただいたことがきっかけです。
渋谷キャストガーデン正面入り口
– 渋谷キャストガーデンでIDEAを採用した決め手を教えてください。
施設での実証実験を始めるにあたって、数社からヒアリングをする中で、技術的側面とコストパフォーマンスはもちろん、相談に乗ってくれる姿勢がよかったことですね。初めての取り組みで、手探りで進めていく中で寄り添いながらデータ活用方法の検討をしてくれたことが頼りになると感じました。
いくつかのベンダーで比較検討しましたが、Intelligence Design社が一番レスポンスが早く、データの活用方法についても真摯に向き合ってくれて議論することができたことが判断の決め手になりました。
– IDEAを活用してどのようなデータを取得していますか?
本導入後、カメラ位置の変更などもあり、具体的な活用まで至ってはいませんが、以下の3つのデータの取得をしたいという思惑があります。
1. 施設の周りにどれくらい人がいるのか?
2. 施設の中にどれくらい人が入ってきたのか?
3. 広場の賑わいがどの程度あるのか?
-1. 施設の周りにどれくらい人がいるのか?-
そもそも、施設周辺にどれくらいの人流がいるのか、今まではデータが取れていなかったんです。
なので施設前の明治通り沿いの人流の計測をしております。
-2. 施設の中にどれくらい人が入ってきたのか?-
1.を踏まえて、施設入り口2箇所でどれくらいの人が流入してきたのかを計測しています。
-3.広場の賑わいがどの程度あるのか?-
ここが当社が一番見たいところです。
広場の賑わいは、イベントスペースの通行量だけでは測れないと考えていて、滞在時間や属性情報が1つの指標になると思ってます。なので広場においては滞留状況の取得をしています。
3つの数字を押さえることで、例えば、街には人が多くなかったけれど、施設・イベントスペースに人が多くいたのか、またはその逆なのか、などデータを比較することでイベント自体の効果検証をしたり、シーズナルの街の人の動きとイベントとの相関があるのか、施設の流入との相関はどうなのか、などを見ていけるのではないかと思っています。
IDEAを導入した渋谷キャストガーデン
– 実際にデータを見て発見はありましたか?
今までは、施設の人の動きのデータの取得ができていませんでした。過去の前面調査のデータを基に、その日の実数ではなく感覚値で、人流の想定をしていました。それが実数でかつ時間帯別・属性別で取得できるようになったことはとても大きなことだと思ってます。
実際のイベントのレイアウトや内容を比較すると、如実に利用者数に変化があることをデータで見ることができて、イベントと集客の因果関係がわかったり、実数としてしっかり施設のことが把握できたというのは大きな効果かなと実感しています。
データアウトプットイメージ
– 3ヶ月間の実証実験の期間を経て、現在では本導入していただいております。
継続して利用することになった理由はありますか?
データを蓄積していかないと、分析に使えるデータにならないということが実証実験でわかったからです。当社が取得しているのは”屋外”の人流データのため、イベント内容とは別の外的要因で人流が左右されることや、傾向を見ようと思ったらそれなりの蓄積がないと分析が難しいということは、やってみて初めてわかりました。
Intelligence Design社に協力していただき、この1年間の蓄積したデータで分析のための必要条件の把握ができました。蓄積したデータから、こういうデータが必要だという議論になり、本導入のタイミングでカメラの設置位置を見直して新たにデータの取得を始めました。
まだまだこれからしっかりとデータを積み上げていく必要があると感じていて、その後で分析をしていくフェーズに移るべきだと考えています。
広場でのイベントの様子
– IDEA導入後、改善されたことや効果はありましたか?
滞留データを広場でイベントを主催するお客様にお渡しできたことです。
通常、イベントを開催すると、利用人数に目が行くことが多いと思いますが、滞在時間がこのくらいでした、一定時間滞在してくれた人が何%いました、などのデータは普通のイベントではなかなか取ることのできないデータだと思うので、そのような情報をお客様にお渡しできるのは大きいと感じています。
イベントのフィードバックができるようになったことで、お客様とのコミュニケーションが深まったり、施設に対して良い印象を持ってもらえるようになったという意味では、人流データを取得していることがプラスに働いたと感じてます。
広場でのイベントの様子
– IDEAのご利用について満足度を教えてください
使い勝手の良い、日々の人流データをクラウドで見れるようになった点で満足しています。
一般的に施設の入館者数や購買データを公開にすることはあまり多くないですが、屋外広場の利用者データは当社で閉じて持っていてもあまり意味がないので、イベント事業者様など色々な人に積極的に解放しています。
様々な観点でデータを見てもらい情報交換をすることで、当社の分析に活かしていきたいと考えています。
– 導入決定から稼働までの苦労はありましたか?
カメラの設置場所の選定には困りました。屋外だと高い位置に設置できる設置面がなく、ポールを立てなければいけなかったのですが、ポールを立てる場所にも制限があって、そこが難しいポイントだなと思いました。
ただ、IDEAには電源があれば稼働ができる設置の手軽さがあり、無事設置することができました。
設置しているカメラ
– IDEAはどのような施設や事業者様におすすめですか?
屋外でも属性情報や人の移動方向が取得できるのは、カメラならではの特徴だと思います。
沖縄のコーカス様の事例でもあるように、人の特性をミクロで見ていくにあたっては適しているソリューションだと感じています。
– 最後に、Intelligence DesignやIDEAに期待することを教えてください
今もデータ活用に挑戦中ですが、この挑戦を形にしていきたいと考えています。
人流データ活用は今後やっていくべき領域だと感じていますし、データが当たり前になる世の中になっていくと思います。
「渋谷キャスト」が持っている背景の賑わいの創出のミッションがある中で、それを達成していくための評価指標が無いことはこの施設の大きな課題で、良いトライアルの機会だと感じているので、まずは何かしら導入したことの実績を出していきたいと考えています。
施設があることによってエリア自体の賑わいが変化しているのか、データ取得でわかりはじめているので、季節の取り組みだけではなくエリアの活性化を考える上でも活用していきたいと考えています。当社だけではなく、Intelligence Design社を含めた他の事業者様とも情報交換をしながらデータ自体を展開していき、賑わいの観点で知見を溜めていければと考えております。
<東急 会社概要>
会社名:東急株式会社
代表者:髙橋 和夫
事業内容:不動産賃貸業、不動産販売業、その他事業
設立:1922年9月2日
本社:東京都渋谷区南平台町5-6
URL:https://www.tokyu.co.jp/index.html